「井上敬一」という人物を知っていますか?
彼は2001年、1日で1,600万円という当時は類を見ない金額を売り上げた伝説のホスト。
その後、テレビ番組「ザ・ノンフィクション」で10年にわたり密着取材され、テレビ出演やセミナー登壇などに引っ張りダコの全国に名を轟かせる有名人に成長したのです。
しかしそんなある日、ホストクラブの顧問税理士による脱税により追徴課税一億円という多額の借金を背負うことに。
一転してその名声は地に落ちることになります。
そんな彼は、今何を思ってどう過ごしているのでしょうか?
今回は、脱税事件から現在の仕事、そしてプライベートまでをインタビューして本音を語って頂きました。
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ホストクラブを引退するきっかけは脱税事件?
出典:YouTube
――本日は宜しくお願いします。
宜しくお願いします。
――さっそくですが、ホストクラブ経営を引退するきっかけは脱税事件だったのでしょうか?
そうです…と言いたいところですが、実は脱税事件の前に引退宣言はしていました。
ただ、やっぱり家族であるホスト達といるのが楽しいし居心地よくて、なかなか本当の意味で引退はできなかったんですよね。
そんな時に起きたのが脱税事件で「あ、今だな」って。
これは責任を取る意味もあったし、正直「今こそ辞めどきだ」っていうのもありました。
甘えを捨てる時期って感じですね。
なので辞めざるを得ない状況になったのは脱税事件です。
追徴課税1億円の脱税事件が発生|当時の心境は?
――脱税事件が起きた時の心境はどうでしたか?
こんなに大事になるんだなって思いましたね。
最初はたいした騒ぎにならないと思っていたし、そもそも税理士が逮捕されているので、「僕らは任せていただけだし…」って思っていました。
ところが検察に呼ばれて毎日聴取されているうちに「あ、認識が甘かったんだな、まかせててたから…で、すむような問題じゃない」って思うようになりました。
――脱税事件が起きて周囲への影響はありましたか?
当時ホスト達のことを命がけで守ってきた自信があったので、彼らに関してはあまり心配していなかったんです。
「しんどい時こそ一緒に頑張ってくれるはず」と。
でも全然違ったんですよね。一番はじめに当時店を任せようと思っていたNo.2が「辞めます」って言ってきて。
そこから、どんどんホストたちが辞めていきました。
店ごと独立されたこともありましたね。
昼は検察に呼ばれて事情聴取、夜は「ついていけません。辞めます」の毎日です。
――彼らが辞めていくのはどんな心境でしたか?
かなりしんどかったです。「家族って言えるほど一緒にいたのになぜ?」と。
人が離れていくのはこんなに辛いことなんだな、と初めて感じました。
それから、毎日店に行くようにして、スタッフひとりひとりに自分の想いを伝えて、逆に聞いて。
それでももう遅かった、どんどん崩壊していったんです。
――ホストクラブ経営以外にもお仕事をされていたと思いますが、そちらに影響はありましたか?
当時はナイナイアンサーのレギュラー出演もしていて、出演者はもちろん番組に関わっていたすべての人に本当に迷惑をかけてしまったと思います。
メディアに出る前に脱税の書類が届いたんで、その時は、「芸能人じゃないからそんなに騒がれないと思うけど…」って感じで番組スタッフに報告したんです。
でも、毎日店(ホストクラブ)の前に取材班がいたり、大阪のすべての新聞載ったり…予想以上に大きな騒ぎになってしまいました。
――テレビ出演などで有名になったことで騒ぎが大きくなってしまったんですね。
そうですね。
後で知りましたが、この税理士さんに頼んでいて、同じように起訴された会社って20社以上あったんですよ。
でも、これだけ騒がれたのは僕だけ。
「あ。テレビ出演するとか有名になるって、こんな大変なことなのか」と思いましたね。
――税理士の裏切りや家族と思っていたホスト達が離れていって、人間不信になったりしませんでしたか?
ないですね。
それ以上に人に救われてきたっていうのがあるんで。
でも当時はやっぱり「自分がやってきたことってこんなに報われないんだ、信頼関係って一瞬で崩れるんだ」って思ったし、人のせいにしてしまっていたこともあります。
――もしこの記事を読んでいて、精神的に大きなストレスを抱えている人がいたら、井上さんだったらどんな声をかけたいですか?
精神的に病んでしまうと、家にこもったりだれとも会わないって人が多いんですけど、逆に誰かと話したほうが良いですよ。
辛いときに一人で考えたってろくな考えにならないし、誰かに会ったときに「助けて」って素直に言うことが大切。
僕自身いろんな人に助けられてきた経験から、意外と人間って信じられるものだと思っています。
――裏切られた経験ばかりの人にはなかなか難しいことですよね。
そうですね。でも僕は、あえて「人に寄れ」っていいます。
別に「相談するぞ!」って会いに行く必要はないんです。
ただ誰かと会って雑談の中で相談しても、意外と良いアイディアを出してくれたり助けてくれる人っているんです。
友達や家族に言いづらいなら、全然知らない人でもいいと思います。
今の時代、ネットでも新しいコミュニティに入れますし、出会いなんていくらでもあるんですから。
とにかく「困ったときは人に寄れ!」
なかなか難しいと思うんですけど、一歩踏み出してみてください。
見出し:追徴課税に追われる日々|救いの手は…
――追徴課税1億円ってかなりの金額ですが、どうやって乗り越えたんですか?
今まで仲良くしてきた人に救われた感じですね。
ホスト達が離れていって辛いときに、ウエイターに一人だけ「一緒に乗り越えましょう」って言ってくれる人がいたんです。
そいつの存在も大きかったですね。
たった一人でも、頑張りましょうって言ってくれる人がいたら人間って頑張れるんですよ。
僕自身めちゃくちゃそいつに勇気づけてもらったと思っています。
それに、僕がお店を辞めるときにお店の社長をやってくれた人間や、過去にうちから独立していた人間が助けてくれたことも大きかったです。
あとは、他の仲間にも助けられました。
――他の仕事仲間って言うと?
仲良くしていた他のホストクラブの経営者とか、ホストクラブ外でご縁をいただいていた経営者仲間です。
――どういう風に助けられたんですか?
例えば、「仕事ないんだったら紹介するぞ」とか「良い弁護士探しておくよ」とか声をかけてくれたり。
あと、お金も貸して頂きました。
借金を返さないといけないから、経営者仲間80人ぐらい集めて「井上敬一復活祭」っていうのを開いたんですよ。
一応事業計画発表会とかだったんですけど、ぶっちゃけ中身は穴だらけだったと思います。
でも僕的にはなんとしてもお金を借りたいから、ストレートに「お金貸してください」って言ったんです。
そしたら発表会に出てくれた80人のうち、20人以上も貸してくれたんですよね。
合計で言うと合計4,250万円くらい。
担保もない、保証人もいないっていう僕にお金を貸してくれたっていうのは、信頼しているよっていうのを示してくれたように思えて「頑張ろう」って思えました。
――人の繋がりが井上さんを助けてくれたんですね。
そうですね。だから今も、人の繋がりに関する「モテさせ屋」って言うのをやっていますし、本当に感謝しかないです。
――脱税事件で得た教訓は?
言葉と行動が一致しないと人がついてこないってことですね。
僕自身、ホストクラブを経営していた時に、よく言われたのが給料を上げてくれってことなんですけど。
ホストの給料体系って売上のパーセンテージなんですよね。
- ホストクラブの売上計算方法
- (例)売上100万円×バック率50%=給料50万円
これを売り上げたのは自分なんだから給料もっと欲しいって。
でも店がもらう50%の中には、ホストを宣伝するための広告費や店を回してくれるウエイターの人件費、店の家賃とか、いろいろなところに使われているんです。
経営者の僕に入ってくるのなんてパーセンテージで言うとせいぜい20%ぐらい。
だからよく経営者側の方が儲かりにくいし、なにより昔でいうショバ代(店を使わせて貰っている代金)もかかってるからちゃんと考えろ、商売やらしてもらってるていう感覚がないとやばいよって言っていたんです。
でも脱税事件が起きて「僕自身ができていなかった」ってことに気が付いたんです。
――国に税金を払えていなかったということですよね。
そう。ホスト達にはちゃんと払うものは払えって言ってたのに、よく考えたら自分がやっていなかった。
道路とか公園とか公共施設も使っているのに、「ただで100%バックしろ」って言っているのと同じだなと。
だから今は誰よりも喜んで税金を払っていると思います。
あとは、知覧という土地からも税金を支払うことの大切さを教えてもらいました。
――知覧というと「神風特攻隊」があった場所ですよね。そこから学んだとは?
そう。「知覧」って土地は、昔、飛行機ごと敵に突っ込む捨て身の作戦を行っていた神風特攻隊の基地があった場所なんですよね。
当時、そこに鳥濱トメさんという「特攻の母」と呼ばれ、特攻に赴く若者はもちろん地域の人からすごく慕われていた人がいて、その人は税務署でもないのに「戦後も税金を納めろ」って近所に言って回っていたんです。
なぜかってていうと、税金は国の血液だからっていう信念があったから。
人間でも血液が滞ったり、澱んだりすると最悪死んじゃいますよね。
国もそうで、税金を納めたら国が再分配して困った人を助けたり、私たちを助けてくれるんだって。
これを聞いたときに、「僕はそんなこと全然考えられてなかった」と衝撃を受けたのを今でも覚えています。
僕も昔から好きでボランティアをやっていたんですけど、税金を払うのも、道路や施設ができて皆の役に立つことなんだからボランティアと言えるじゃないですか。
今まで税金=ボランティアなんて考えたことなかったけど、トメさんの言葉でそう思えるようになったんです。
それからは誰よりも喜んで税金を払うようになりました。
――知覧という土地や鳥濱トメさんの言葉でガラッ考え方が変わったんですね。
そうですね。僕はそこで変わった。
税金に関してだけじゃなくて、特攻隊の皆さんやトメさんの生き様をみて、自分がこれからどう生きていくかを深く考えるきっかけにもなったんです。
知覧に触れることで本当に人生が変わりました。
今ではいろんな人に死生観や志を考えるために、「知覧立志合宿」っていうのも定期的に企画して行っているくらいです。
出典:井上敬一と行く「知覧立志合宿」
知覧立志合宿とは?
現在の過ごし方!どんな仕事をしているの?
――今はどんなお仕事をされているんですか?
モテさせ屋です。
「人にモテる」人をいっぱい作る仕事です。
出典:Twitter
あ!「モテる」といっても、恋愛だけの話ではなくて…「たくさんの人から好かれる」という意味です。
手前味噌ですが、脱税事件のことからモテてなかったら、誰も力を貸してくれないってことが分かったんですよ。
モテない人も一生懸命生きていて、だけど不器用だったり人見知りだったり人間関係を築くのが下手なだけ。
僕はそれをすごく損していると思います。
自分が大変な時に「この人のためだったら」「この人に協力したい」と思ってもらうためには人にモテるしかないんです。
僕はその方法を伝えられると自信を持っていますから、この仕事をやっていいます。
――モテさせ屋って男女の関係についてだと思いました。
モテるって男女の関係だけじゃないんですよ。
人材育成もリーダーシップもすべて人モテにつながる。
離職率もそうですね。
離職する人って人間関係で辞める人が多いじゃないですか。
だけど、自分を好いてくれる人が増えれば離職率も下がるし、成長すれば生産性も上がる。さらに言えば精神的に病んでしまう人も少なくなりますよね。
あとは良い成績を残す営業マンもそうです。
仕事の営業って別にメールや電話でも良いじゃないですか。
だけど未だに営業マンがいるのって、その人自身が好きで商品やサービスを買ったということがあるからです。
恋愛だけじゃなくてそういうのを含め、「モテさせ屋」なんです。
――他にはどんな仕事をしているんですか?
あとは、女性の夢を応援するための「online home lounge」とか「パーソナルブレインバンクっていうのもやっています。
――パーソナルブレインバンク?
パーソナルブレインバンクは、経営者と1対1でZoomを使って経営指導するっていう事業です。
経営についてのセミナーってたくさんあるんですけど、どうしても「1対多」になりがちで自分の悩みを解決できなかったりするんですよね。
だから、1対1でみっちり話せるこの事業を始めたんです。
ちなみに指導者は、僕だけじゃなくていろんな経営者とか仲間がいて、自分の話したい人と話せるようになっています。
――女性に対しての応援プロジェクト、そして経営者向けの事業、幅広いですね。
そうですね。
他にも水商売の女性向けに「水商売セカンドキャリアプロジェクト」とか、先ほどちょっと言った死生観を学ぶ「知覧立志合宿」の企画もやっています。
あと今後は葬儀屋さんとかも考えています。
その他の事業内容 |
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――ありがとうございます。ちなみにホストクラブ経営と現在で考え方は変わりましたか?
当時はホスト達に全然与えていなくて、自分のことばっかり考えていたなと。
やっぱり自分が儲けようとかが強かったんですね。
もちろん今も稼ぐことは考えていますが、「共に」って気持ちが強くなりました。
経験上一人では生きていけないし、仕事もプライベートも人との繋がりがあってからこそですからね。
それにやっぱり与えることでいつかその恩が返ってくるんです。
だからこそ皆一緒に頑張ろうって考えにかわりました。
密着!謎が多い井上敬一のプライベートとは?
――休みの日とかってどうやって過ごしているんですか?
ほとんど仕事ばっかりですよ。
でも、「空いた時間は休む!この日は仕事いれない!」って日もつくっています。
――空いた時間や休みの日はどういうことをしていますか?
妻と映画に行ったり、買い物に行ったり、神社巡りをしたり結構アウトドア派です。
今はコロナもあってあんまり外に出ず、プライムビデオばっかりですけど(笑)
あとは、ワンちゃんの散歩とか。
出典:ameblo
――結構休みなく働いているイメージですが…
そうですね。いつも働いています。
でも僕、仕事がゲーム感覚で楽しいと思ってやっているので、精神的に疲れることは全然ないです。
夜は明日はこれしよう、あれしようってワクワクしながら寝ます。
――すごくポジティブなイメージですが、コンプレックスとかあるんですか?
手が小さいとか、小指まがっているとか、鼻が丸いとか(笑)
人と比べて落ち込むことはないですね。
むしろコンプレックスってさらけ出すと可愛がってもらえるので、あえて自分から言っちゃいます。
そうすると、「正直でいいな」とか「可愛いなお前」とか言ってもらえるし、可愛がってもらえるんで。
皆コンプレックスはさらけ出していきましょう!
ーー勉強になります。それでは最後の質問ですが、ホストをしていなかったら、今なにをしていると思いますか?
詐欺師!昔から口が上手い方だし。世渡り上手というか…自分で言うのもなんですけど(笑)
まとめ
出典;井上敬一オフィシャルサイト
名前 | 井上敬一 |
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年齢 | 44歳 |
経歴 | 立命館大学を中退後、ホスト業界へ。 ホストクラブグループ「SHION GROUP」オーナーを経て 現在は企業で講演活動を中心に活動。 |
事業 | 株式会社FiBlink(ファイブリンク)代表取締役 一般社団法人恋愛・結婚アカデミー協会 代表理事 ※講演、セミナー、研修講師(コミュニケーション)、 恋愛評論家、復縁コンサルタント、 WEBセミナー事業(パーソナルブレインバンク)、 アパレル、サムライスーツプロデュース 他 |
著書 |
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